毎日テレビでも話題の「森友学園」問題。「安倍総理が100万円の寄付」など、さまざまなことが出てきて、いったい本筋は何なのかが見えにくくなってしまいました。そこで、いくつかに分けて整理しておきます。
ネットでは「財務省ルート」とも呼ばれ、日本共産党の宮本たけし議員が主に追及に立っています。テレビで「佐川理財局長」の顔を見慣れた方もいるのではないでしょうか。
本来9億5600万円と評価された土地が、ゴミ埋設物の除去のためとして8億円以上値引きされ、売買価格は1億3400万円、さらにそこに国からの「有益費」1億3200万円が入り、実質224万円で購入できたのです。さらに、売買代金は10年ローンとされ、実質国に支払うのは年間1100万円だけ、という破格の待遇です(図=赤旗2月25日付より)。
しかも、森友学園の籠池理事長はラジオで、「ゴミの撤去をしたのは校舎部分だけで、運動場はしていない」と発言。この「除去していない」運動場部分だけで、3億6000万円をまるまる利益にした可能性が指摘されています。このゴミ埋設物撤去が実際に行われたかについて、佐川理財局長は確認する必要もないと驚きの答弁をしています。
さらに、ゴミ埋設物がどう埋まっていたから8億円の値引きになったのか、その根拠も不明です。通常行われる民間業者による入札を行わず、他にゴミ埋設物の撤去費用の見積もりをやったことのない大阪航空局が見積もりを行っています。その理由を「小学校開校まで時間がなかったから」としていますが、お役所がそこまで相手側の都合に配慮するのも極めて異例です。また、ゴミの埋まっていた深さについても、証拠が一切なく、「8億円の値引き」をするためにゴミの深さ・混入率を逆算したのではないか?という疑惑も持たれています。
その上、売買の前には相手に伝えてはいけない売買価格を、森友学園側に漏らしていた疑惑もあります。具体的には、2015年の9月4日午前10時~12時に、近畿財務局9階の会議室で、近畿財務局が森友学園側と売買価格の交渉を行ったのではないかという疑惑があります(2月24日宮本たけし質疑)。
こうしたことが、官僚だけでできるはずはなく、当然政治家の関与が疑われます。同時に、なぜ財務省がこんなに優遇したのか、その経緯も検証されなければなりません。
財務省の佐川理財局長は、一貫して「政治家の関与はなかった」「事前に価格は漏らしていない」と主張していますが、その裏付けとなる面会記録はすべて「破棄した」と説明しています。こんな説明に納得する国民はいないでしょう。当時の理財局長だった迫田英典・現国税庁長官を含め、当時の財務省・国交省関係者の証人喚問が必要です。同時に、官僚がそう易々と記録を破棄することは考えられないことから、国会の権限(国政調査権)によって、財務省・国交省に対し書類の提出を要求する必要もあります。
ネットでは「維新ルート」とも言われています。
小学校設立の認可は、大阪府が行います。文科省の基準では、運動場は借地の上でもよいが、校舎は自前の土地の上になければなりません。しかし森友学園が建設を進めた当時は、校舎部分も国有地を借りた状態でした。
また、大阪府私学審議会では、森友学園の財政状態に多くの疑問が出されました。これは当然のことで、もし小学校が財政破たんしてしまうと児童に影響が出ます。私学審には、自分も私立学校を経営している委員も多く、議事録では本当に大丈夫なのか、といった指摘が相次いでいます。
ところが、土地と財政という大きな疑念があるにも関わらず、大阪府は「認可適当」という結論を出しています(のちにこの問題が大きくなってから取り消し)。
認可を認めるプロセスに疑惑がもたれるところですが、これまた大阪府私学課と森友学園との間の記録は残っていない、と大阪府は説明しています。
大阪府の松井知事、私学審関係者の証人喚問が必要です。
「官邸ルート」とも言われています。今回の森友学園問題では、安倍昭恵・首相夫人が名誉校長になっていた(のちに辞任)ことも取り上げられました。また、最近話題の「安倍首相から100万円の寄付受けた」(籠池氏)もここに入ります。これらについては、それ自体は、教育内容(後述)への道義的責任のみ問題になることで、とくに法律に違反したということではありません。
しかし安倍首相は、「自分や妻が関与していたら総理も議員も辞める」と強い口調で関係を否定しています。これは稲田防衛相も同様で、当初は「かごいけさん?」と、籠池氏を知らないかのように振る舞っていました。
ところが、稲田防衛相に関しては、弁護士時代に森友学園の顧問弁護士になっており、訴訟代理人まで務めていたことが発覚しました。昭恵夫人に至っては、参議院予算委員会の調査が行われている最中に籠池氏に激励のメールを送ったのでは、という疑惑まで出ています。
そもそも、安倍首相自身、最初は「教育内容に共感した」と言っていたのが、問題が大きくなるにつれて、(籠池氏は)「非常にしつこい方」と手のひらを返すかのような変わりぶりを見せています。
後述する異常な教育内容の学校を礼賛した、首相自身の道義的責任も免れません。いわば首相夫妻が「広告塔」となったことは明らかだからです。小池晃議員の追及に対し、安倍首相はついに最後まで道義的責任を認めませんでした。
何よりも、国会で虚偽の答弁をしたとなれば重大問題です。昭恵夫人の証人喚問も必要ですし、稲田防衛相の辞任は他の問題(南スーダン日報問題)とあわせて当然求められます。
これについてはかなり報道されました。教育勅語を読ませる・決まった時間にしかトイレに行かせない、など異様な教育内容です。
とくに後者、トイレに関わる部分での異常な強制は、「虐待」に相当する可能性があります。吉良よし子議員が国会で追及しています。
23日の籠池氏証人喚問にメディアの注目が集まっていますが、これは真相究明の第一歩、「糸口」にすぎません。証人喚問で幕引きとさせるわけにはいかないのです。
世論調査でも圧倒的多数の国民が、この森友学園問題の政府の説明に納得していないと答えています。集中審議や、財務省ルート・維新ルートの証人喚問を続けて行うべきです。