国会で成立した「年金カット」法。その恐ろしさがまだ十分には知られていないようですので、問題点をまとめます。
今回の年金カット法によって、賃金が下がれば年金額は引き下げられることになります。物価が上がっていても、賃金が下がっていれば否応なしに年金が減ります。年金が唯一の収入の方は、物価が上がっているのに年金が減れば、ただちに生活に影響します。高齢者世帯の収入の7割は年金で占められていますし、6割の高齢者世帯が年金のみで生活しています。現在の年金制度でも生活に十分な給付額とは言えないだけに、高齢者の生活が危険に晒されます。
物価に限らず、消費税増税が実施されても年金は容赦なく減らされる仕組みです。
まとめてみると…(カッコ内は現行制度)
こうして見ると分かるように、年金カット法が実施されれば、年金は一度削減されたら何があっても元には戻りません。とにかく下がり続ける仕組みになっています。
政府は、「年金は現役世代から高齢世代への仕送り」と言い、将来の年金を確保するためだと説明していましたが、日本共産党の追及に対して、「将来世代の年金が増えるとは言っていない」「導入されれば賃金にあわせて名目の年金額は下がる」と答弁しました。最初の説明がまったくのウソだったことを認めたことになります。
さらに、先に述べたように一度下がった年金は二度と上がりません。これは、将来年金を受け取る現役世代も、「引き下げられた年金額」を受け取ることを意味します。現役世代にとっても年金カット法にメリットはありません。
すでに、年金基金は危険な株式運用につぎ込まれ、巨額の評価損を出しています。「アベノミクス」の好調を装うために巨額の年金基金を株式投資に回した結果、巨大企業の筆頭株主が年金基金になってしまい、「これでは民間企業の国有化だ」とさえ言われています。もし、年金基金が株主となっている企業に不祥事でもあれば、年金基金に多額の損失が生じます。国民から強制的に徴収した年金基金は国民のものです。いっときの経済成長を見せかけるためのマネーゲームにつぎ込むべきではありません。
12月13日の参議院厚生労働委員会で倉林明子参議院議員が追及しましたが、高齢者ほど地元で物を買う消費活動を行っています。ですから、年金の削減は、地域経済の活性化にも逆行します。
強行採決で慌ただしく成立した年金カット法ですが、実施は5年後の2021年度となっています。これからの市民と野党の共闘で、この悪法を実施させず廃止に追い込むことは可能です。衆議院選挙で国民の審判を下す必要があります。